「平成30年7月20日掲載」
知って得する税の寺小屋
Q.父が事故で急死しました。父が勤めていた会社(勤続35年)から死亡退職金が支給されると連絡がありましたが、こちらも相続税の対象になるのでしょうか。相続人は母と兄と私の3人です。
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A.
被相続人が死亡に伴い勤務先から支給された死亡退職金は相続税の課税対象となります。
本来死亡退職金や死亡生命保険金などは民法上の相続財産に該当しません。ただし相続税においてはその経済価値に着目し、これらを相続財産とみなして相続税を課税します。
死亡退職金は遺産分割協議書や会社の退職給与規程で受取人となった相続人について、その受取額が相続税の課税財産となります。死亡退職金は1人が相続しなくてはいけないものではないので本ケースのように複数の相続人が死亡退職金を分割して受け取ることも可能です。
また死亡退職金は後述で計算した金額を非課税として相続財産に含めないことになっています。非課税金額を超える部分が相続税の課税財産となります。
●すべての相続人が受け取った死亡退職金の合計額が「500万円×法定相続人の数」以下である場合…その相続人の取得した死亡退職金額
●すべての相続人が受け取った死亡退職金の合計額が「500万円×法定相続人の数」を超える場合…{(500万円×法定相続人の数)×(その相続人の取得した死亡退職金額)/(すべての相続人が取得した死亡退職金の合計額)}
他に注意すべき点は以下のとおりです。
①【死亡退職金以外に支給される弔慰金】
勤務先から死亡退職金以外に支給される弔慰金、花輪代、葬儀料などについては相応と認められる金額までは相続財産に含まなくてもよいことになっています。
このうち弔慰金については次の金額を限度としています。
㋑業務上の死亡の場合…給与の3年分
㋺業務外の死亡の場合…給与の半年分
②【死亡後3年経過後に確定した死亡退職金】
被相続人の死亡後3年経過後に確定した死亡退職金については相続財産とは取り扱われず、相続人の一時所得として所得税の課税対象となります。
死亡退職金は遺産分割協議における財産調整や生活費の補てん、納税資金などさまざまな用途への運用が可能です。非課税を上手に利用しながら相続人にとって有意義な分割が行えるとよいでしょう。